日韓間の経済協力および安全保障協力の事例と未来志向の日韓関係
姜哲求(カン・チョルグ)培材大学 日本学科
日韓協力の新たなパラダイム
1989年のベルリンの壁崩壊と1991年のソ連の正式な解体により、脱冷戦が本格化した以降、規範に基づいた国際秩序(Rules-based International Order)は、米中技術覇権の時代と相まって、ロシア・ウクライナ戦争の長期化、米国とイラクの終わりの見えない交戦状況、そして台湾海峡の緊張高まりなど、北東アジアを含む全世界の安全保障環境までが急変し、もはや機能し難い時代へと転換しつつある。
こうした状況下で、対外依存度の高い日韓両国は、米国中心の一方的なサプライチェーン再編(フレンドショアリング)という圧力の中でも、中国という巨大市場を放棄することは困難であるという実存的な危機を克服するため、現実的かつ具体的な協力および克服策を講じるべき時点に至った。その点から見ると、日韓両国の戦略的ジレンマはほぼ完全に一致している。したがって、日韓両国は各自で生き残るよりも、日米韓3カ国の枠組みを維持しつつ、日韓が連携して半導体に代表される先端産業のバリューチェーンを緻密に結びつけ、一種の防衛的ブロックを形成する一方、多国間主義の秩序回復に向けた中堅国(ミドルパワー)としての連帯と、規範に基づく自由貿易を支持する補完者の役割を構築していく方策を講じるべきだろう。
たとえ歴史問題が日韓関係を頻繁に揺るがすことはあっても、先端半導体やグローバルサプライチェーン、エネルギーの需給や北朝鮮の核問題への対応、そして北東アジアの安定など、両国が共通して直面する懸案により、日韓両国は実用外交と協力の必要性をさらに高める方向へと収束していく時代の要請に応えざるを得ない。特に、韓国の李在明政権と日本の高市早苗内閣が誕生し、両国の首脳外交や閣僚級協議などのシャトル外交が復活した点を踏まえると、日韓両国の「未来志向的な関係」を制度化しようとする流れは、より鮮明になっていると言える。そこで筆者は、経済協力とサプライチェーンの安定化、そして安全保障協力という三つのキーワードを通じて、未来志向の日韓関係を展望したい。

日韓経済協力の事例
日韓両国の企業間では、すでに共同のバリューチェーンを構築し、サプライチェーンの安定化を追求してきた。米国のインフレ抑制法(IRA)に対応するため、米国でLG化学およびLGエナジーソリューションとトヨタ自動車が協力し、現代自動車は米国内の生産拠点で日本のデンソー(DENSO)から必要な部品を調達するなど、水平的な協力事例が多数見られる。
両国の半導体産業における協力はどうか。韓国はメモリ半導体の製造能力において比較優位を、日本は優れた素材・部品・設備の競争力において比較優位を持っており、それぞれの比較優位を組み合わせれば、世界の半導体サプライチェーンの安定性を主導していくことができる。特に2019年の対韓輸出規制以降、多くの日本の素材・部品・設備企業が韓国国内に生産拠点を着実に新設または拡大しており、このような日韓間の半導体サプライチェーン協力は、半導体生産の安定化を超え、今後、メモリおよび非メモリ半導体市場の支配力を左右する最先端化に向けた不可欠なパートナー関係へと進化していると言える。
企業だけにとどまらない。国家や経済団体のレベルでも、協力方案が積極的に議論されている。2024年5月、韓国中小ベンチャー企業部の主管で開催された第2回日韓バイオベンチャー・エコシステム・ラウンドテーブルでは、共同研究、臨床データの共有、相互市場進出戦略などが議論され、日本の経済産業省と総額1億ドル規模の共同ファンドを組成するというMOUを締結した(2024年5月)。また、韓国中小企業中央会と日本全国中小企業団体中央会は、韓国のICT技術と日本の素材・部品・設備技術を交流し、両国の中小企業の人的資源不足を解消するためのMOUを締結した(2024年7月)。
このように、日韓の経済協力は、単に過去の垂直的な分業構造を超え、急変するグローバルな危機に共同で対応する水平的かつ戦略的なパートナーシップへと進化している。これは、未来の新産業における主導権を確保するための条件でもある。民・官・学を網羅する全方位的な交流と政府レベルでの制度的な支援が継続されれば、日韓両国はグローバル市場において最も強力なシナジーを生み出す未来志向の経済パートナーとしての地位を確立することになる。
サプライチェーンの安定化に向けた日韓協力
日韓両国はともに天然資源が乏しく、エネルギーの海外調達比率が高いだけでなく、主要産業に必要な重要鉱物の特定国への依存度も高いため、輸出規制などのサプライチェーンリスクが発生した場合、基幹産業全般に連鎖的に悪影響を及ぼす可能性が高いため、資源サプライチェーンの安定化に向けた協力が必要な分野である。幸いなことに、すでに企業レベルで海外資源事業の共同投資・運営が活発に行われており、機関および政府レベルでの協力に関する議論も拡大する傾向にある。代表的な事例として、韓国ガス公社と日本最大のエネルギー企業であるJERAは2023年4月に業務協定を締結し、LNGの共同購入、船舶の共有、需給危機時の相互LNGスワップ(swap)対応体制などを整備した。また、韓国産業通商資源部と日本の経済産業省は2025年2月に日韓鉱物資源対話を開催し、重要鉱物の備蓄協力、共同生産、政策連携の強化など、サプライチェーン協力方案について議論した。
最近では、日韓産業通商大臣会談において、日韓サプライチェーン・パートナーシップ(SCPA、Supply Chain Partnership Arrangement、2026年3月)を締結するとともに、「日韓産業通商政策対話」を新設することで合意した。産業通商部の報道資料(2026年3月14日)、「インド太平洋エネルギー安全保障閣僚会議に連携し、日韓産業通商大臣会談を開催」参照
核心は、サプライチェーンの混乱の兆候が見られた場合は相互に通報し、要請があれば5日以内に緊急会議を開いて対応する一方、相互のサプライチェーンに悪影響を与える措置は自制し、やむを得ず措置が必要な場合でも協議手続きを経るよう定めた点である。これに加え、重要鉱物や資源分野における共同探査、投資、技術協力を拡大する内容も盛り込まれており、これは単に物を売買する次元を超え、原材料の確保とサプライチェーンの安定性そのものを共同で管理するという意味である。
日韓サプライチェーン・パートナーシップの最大の期待効果は、外部からの衝撃が生じた際に発生する生産の支障やコスト上昇のリスクを軽減する安全装置としての役割を果たすため、企業の立場からは在庫負担や緊急調達コストを低減でき、政府の立場からは経済安全保障への対応力を高めることができるという点である。今回の協力は、「準備(Readiness)-復旧(Restoration)-回復力(Resilience)」という3R原則に基づいて設計されており、これは危機が訪れる前からデータを共有し、危機発生中は共同で対応し、その後は迅速に正常化する体制で構成されているため、日韓企業間の貿易拡大にも寄与し得る。このような両国政府間の公式な対話窓口のおかげで、今後は通商や経済安全保障だけでなく、鉄鋼や鉱物資源など多様な議題を定例的に点検し、緊密に管理できるようになり、安定したサプライチェーン協力が可能になると期待される。
今やグローバルサプライチェーンは、効率中心の分業体制から脱却し、地政学的リスク管理と経済安全保障を重視する方向へと再編されつつある。米中対立の長期化、先端技術の戦略資産化、そして国家安全保障を理由に外国人投資審査を強化するなど、企業の投資判断基準が根本的に厳しくなる環境変化の中で、日韓両国の企業間の協力と政府レベルでのサプライチェーン協力体制を構築したということは、グローバルサプライチェーンの変動性や技術覇権競争の中でも、持続可能な競争力を確保できることを意味する。
日韓の安全保障協力の現状
日韓間の安全保障協力は、主に北朝鮮の核・ミサイルへの対応や日米韓の連携、そして経済安全保障協力という形で現れている。2023年8月、キャンプ・デービッド首脳会談以降、北朝鮮のミサイル警報情報のリアルタイム共有体制が定着し、日米韓3カ国間の対潜水艦訓練、海上ミサイル防衛訓練、そして多領域連合軍事演習である「フリーダム・エッジ(Freedom Edge)」などの共同軍事演習を定例化することで、対北朝鮮抑止力を高度化するとともに、探知・迎撃能力が画期的に向上したという評価を受けている。米韓連合演習である「フリーダム・シールド(Freedom Shield)」と日米連合演習である「キーン・エッジ(Keen Edge)」の名称を組み合わせたもので、従来の米韓同盟、日米同盟という二国間関係を超え、日米韓3カ国の安全保障協力を新たな次元へと発展させたという象徴性を表している。
日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の完全な正常化(2023年3月)も、安全保障協力において欠かせない事例である。これにより、軍事情報交換の法的・制度的な安定性は一定程度確保され、両国の「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の基調の下、主要な海上交通路(SLOC)の安全確保や違法積み替えの取り締まりなどを目的とした海上保安庁と海洋警察間の協力も緊密になった。2025年の首脳会談共同声明では、北朝鮮の違法なサイバー活動やロシア・北朝鮮間の軍事協力に共同で対応するという内容に加え、日米韓の協力を基盤とした安保理の対北朝鮮制裁の履行が強調され、2026年には防衛相間の交流、捜索・救助訓練の再開、航空機空中給油協力といった実務的な協力が報じられ、軍事協力の幅が広がっている様子も確認される。
結果として、両国の安全保障協力は、単に宣言的なレベルにとどまるのではなく、実務的・戦略的な次元で一段と高度化していく傾向にあることを示している。今後もこうした協力の基調を安定的に持続させていくことが、急変する北東アジアの安全保障情勢の中で、両国の国益を守る重要な課題となるだろう。
残された課題
日韓両国間の経済および安全保障協力は、単なる資本移動やMOUの締結にとどまらず、相互補完的なサプライチェーンの構築を基盤として、グローバル競争力を強化する手段へと進化している。特に、日本の半導体素材・部品・設備企業が韓国国内に生産拠点を新設・拡大し、韓国のメモリ半導体企業と緊密な協力体制を構築していることは、次世代プロセス技術における技術格差を縮めつつ、グローバル・バリューチェーンの上位段階へと飛躍する機会でもある。もちろん、これは韓国だけの利益ではなく、両国ともに代替サプライチェーンの構築と経済安全保障の強化に寄与できるからこそ可能なことである。
今後残された課題は、長期的かつ安定した取引関係を好む両国の企業が、信頼に基づくパートナーシップを構築できるよう、政府レベルでの環境整備支援と、両国政府による一貫した経済外交政策が実施されることである。これは、革新的な人材の育成、産業エコシステムの構築、新市場の開拓など、様々な分野で新たな成長曲線を描き、シナジーを創出できるからである。また、過去に発生した軍事的紛争の事例(例:哨戒機紛争)が再発しないよう防止策を明確にし、現場の指揮官間のホットラインも活性化させるなど、両国の政権交代や世論の変化に左右されないよう、安全保障協力体制を高度化・制度化(条約または協定レベル)する作業が必要である。
未来志向的な日韓関係とは……
日韓両国の立場からすれば、「未来志向的」という意味は、解決が困難な歴史問題がまだ残っており、複雑にならざるを得ない。それにもかかわらず、2025年8月23日、日韓国交正常化60周年の際の共同プレスリリースを見ると、金大中・小渕宣言の継承、シャトル外交の再開、青年交流の拡大、ワーキングホリデーの機会拡大などを通じて、関係の制度的基盤を強化すると提示した。つまり、未来志向性とは「過去に囚われた感情的な悪化の防止」という消極的な意味ではなく、実益中心の外交戦略に近いと言える。
現在、日韓貿易は垂直的な分業から水平的な協力関係へと転換しつつあり、両国企業間の戦略的提携や共同イノベーションの必要性が高まっている。かつては衣類に代表される軽工業製品や一次産品が韓国の対日輸出で大きな比重を占めていたが、現在はIT製品や重化学工業製品が主導している。逆に、対日輸入においても半導体が不動の1位を維持する中、韓国の半導体生産のための装置およびシステム半導体が大きな比重を占めている。これは、先端産業やAIエコシステム関連産業においては、日韓間の貿易構造において競合度が高くないことを意味する。それゆえ、協力および補完関係が可能であるということである。
韓国貿易協会が実施したアンケート調査の結果によると、韓国企業の66.2%、日本企業の75.5%が相手国のパートナー企業との協力に満足していると回答し、韓国企業の94.5%、日本企業の95.9%が今後、相手国のパートナー企業との協力を拡大・維持する意向があると回答した。「TRADE FOCUS」2025年第14号の資料参照(韓国貿易協会、2025年6月)
これほどまでに、両国の企業が長期的な信頼に基づく安定した取引と相互市場へのアクセスという戦略的利点を高く評価していることを示唆している。
日韓関係は、もはや二国間関係にとどまる「隣国」ではなく、伝統的な経済協力を超え、安全保障と経済が融合した新たな協力パラダイムを模索する段階に入った。両国は、G7、G20、IPEF、FOIP、ASEANなど数多くのグローバルな舞台で共に規範やルールを策定(ルールメイカー)する一方、気候変動やパンデミックなどのグローバルな課題を主導するパートナーシップへと進化しなければならない。もちろん、過去の問題によって制約される部分はあるだろうが、対立を管理しつつ、経済協力と安全保障協力という共通の利益と実用外交を追求していかなければならない。今や日韓両国は、経済協力の制度化、安全保障協力の実務化、歴史問題の管理化を通じて、未来志向の日韓関係を構築していかなければならない時代を迎えている。