
トランプ時代の到来と北朝鮮の選択

チョン・ジュンヒ統一研究院監事
▢ トランプの当選と北朝鮮の沈黙
北朝鮮はトランプの当選からほぼ半月が経っても、祝賀はもちろん、当選の事実すら報道せずに黙々とし反応がない。事実、北朝鮮は2016年トランプが初めて当選した時にも、米大統領選挙の結果を10日以上経ってから対韓国非難記事に入れて間接的に報道し、2020年バイデンの当選時にも2ヶ月以上沈黙し、公式就任後に当選事実を初めて伝えた経緯がある。
トランプは今年7月の共和党全党大会の大統領選候補受諾演説で、「私は北朝鮮の金正恩と非常にいい関係にあった」とし、「核兵器をたくさん持っている人と仲良く過ごすのは良いことだ」と述べ、当選した場合、北朝鮮との関係増進に対する期待感を持たせた。しかし、北朝鮮はトランプが候補受諾演説で金正恩との親交を取り上げた数日後、朝鮮中央通信を通じて、これに対して「朝米(米朝)関係の展望に対する未練を膨らませている」と一線を引いた経緯がある。一方、米大統領選挙に対する無言の代わりに、金正恩は11月15日、第4次大隊長·大隊政治指導員大会の演説において「核武力を中枢とする国家の自衛力を限界なく、満足せず、不断に強化していく」と強調した。
これは何を意味するのだろうか。
果たして、トランプが示唆したように米朝対話が再開されるのか。再開されればその内容と水準はどの程度なのか。また、米朝会談が南北関係にどのような影響を及ぼすのか。世間の議論は様々である。
▢ 米国の先行的な措置を求める北朝鮮
北朝鮮は2019年、米国とのハノイ首脳会談の失敗を機に、国家目標を転換したものとみられる。ロシアとの密着とともに「中国誘引」に集中し、当分の間、対米関係を後回しにする可能性が高い。

2017年11月の「核武力完成」宣言後、金正恩は2016年以降からの北朝鮮に対する制裁によって、困難さが加速するという点を直視し、北朝鮮に対する制裁解除を目標として設定した。2018年の新年の辞を通じて対北朝鮮制裁解除のために韓国を利用して米国に接近しようとした。韓国や米国と首脳会談をするなどの攻勢を通じてこれらに北朝鮮を意識させ、また中国を刺激した。北朝鮮が米国と近くなるのではないかと焦る中国の心情を読み、金正恩が先に中国に首脳会談を提案すると、中国は素早く駆けつけた。
金正恩政権後、軋轢が生じていた中国との二国間関係は、またたく間に密着的な関係に転換し、北朝鮮制裁に関して重要な裏口的なルートが開かれることになった。それは2018年には制裁がうやむやになるほどだった。しかし、対北朝鮮制裁を完全に断ち切ろうとしたハノイ会談が失敗すると、北朝鮮は新しい道を提示し正面突破戦を宣言した。これは対北朝鮮制裁解除という目標を越え、中国やロシアなど周辺国の干渉を排除して核を使用できる「自主的核国家および自立経済」という目標を目指すいう意味と捉えられる。また、韓国を通じた米国への接近方式を捨て、核能力の強化を媒介に直接米国と交渉するという戦略的転換も意味する。
現在、北朝鮮はウクライナ侵攻を契機にロシアとの同盟条約締結と派兵まで決行することで「事実上の核保有国」の地位を誇示すると同時に、ロシア特需を通じた「事実上の制裁緩和」状況を享受している。ロシアとの密着が中国を多少不快にさせるだろうが、中国も北朝鮮を支持せざるを得ないだろう。このように北朝鮮は、国際情勢を自分たちに有利に利用し、戦争特需による利益確保と内部整備に力を入れている状況だ。
このように、北朝鮮も米国との対話に優先順位を置くことは難しい状況だ。 ロシア特需を享受する状況が続いており、中国の圧迫も特にない状況で米国との対話から得られる利益があまりないという計算が成り立つのも当然ではないか。そして、米朝対話の結果によっては利益もあるだろうが、むしろ受け入れなければならない負担がより大きな問題かもしれない。
また、米朝対話に関連し、北朝鮮は2019年にすでにアメリカとの対話条件を高めている。「米国は対朝鮮敵対視政策を撤回する前に、非核化交渉に対して夢も見てはならない」(「19.11.19.アジア太平洋平和委員長談話」)、「非核化措置対制裁解除」という過去の米朝交渉の基本テーマが、今は「敵対視撤回対朝米交渉再開」の枠組みに直されなければならない(「20.7.10金与正党中央委第1副部長談話」)などの立場表明が続いてきた。トランプの金正恩との親交についても、「首脳同士の個人的な親交も肯定的かつ実質的な変化をもたらすことができなかった」という失望表明とともに、「どの政府も気にしない」と強調(「24.7.23」朝米対決の秒針が止まるかは、米国の行動次第だ」と中通論評)し、米国が対話をしたければ、まず友好的な措置を取るよう求めている。対話のためには米国の先制行動を要求する態度を堅持しているのだ。
▢ 今後の米朝関係の不確実性増加の可能性と我々の対応
現在、米国と北朝鮮はいずれも対話に焦る理由はない。
しかし、北朝鮮のICBM発射のような強力な挑発は、政治的要因よりも軍事的要因によって制限的に行われる可能性が高い。北朝鮮は2021年、党第8回大会で提示した国防科学発展および兵器体系開発「最優先五大課業」達成のために邁進中だ。超大型核弾頭、極超音速滑空飛行戦闘部、水中および地上固体発動機ICBM、原子力潜水艦、軍事偵察衛星の開発などに力を注ぐ。2025年の党創建80年など主要政治行事の実績を準備し、また未知の米朝対話を念頭に置いた「身代金引き上げ」次元において、いつでも実験活動を展開するものと見られる。
一方、ロシア・ウクライナ戦争の終結によって「ロシア特殊」が消え、米ロ関係が好転し、中ロ間の蜜月状況が多少緩んだ場合、中国の対北朝鮮支援を引き出すためにも、北朝鮮は対米対話を利用しようとする誘引が増大するだろう。トランプもまた、ロシア・ウクライナ戦争とイスラエル・ガザ戦争という二つの戦争が終息し、2026年の米中間選挙後、レームダックの時期を迎えることになれば、国政運営の新しい動力を確保し、自分のレガシーを残すために、米朝間の首脳会談カードを活用しようとする欲求が増大するであろう。
このような国際情勢の変化と北朝鮮の軍事活動などによって、韓半島の緊張の高まりと米朝関係の不確実性は、ジェットコースターのように韓国にとって困難な挑戦になる可能性がある。韓国は、緊張と対話の局面、いかなる状況でも韓米間の徹底した調整を通じて、韓国の国家目標と国益を守らなければならない。戦略はもとより、細部事項まで代案を提示する緻密さをもとに、時には強く、時には相手の体面を考慮する老練さで、韓米間の国益を同調させ、北朝鮮の変化を誘導しなければならない。