
過去の歴史には穏健、安保には強硬な日本の新首相、石破茂

ユ・ミンヨン/政治学博士
成均館大学東アジア学術院サーベイリサーチセンター専任研究員
9月27日に行われた自民党総裁選挙で石破茂元自民党幹事長が選出された。石破新総裁は10月1日に開かれる臨時国会で日本の新首相に就任することになる。長い間、党の非主流改革派として評価されてきた石破は、自民党総裁選挙において5度目の挑戦の末、自民党総裁と日本の首相の座につくことになった。今回の総裁選挙では石破新総裁とともに高市早苗経済安保相、小泉進次郎元環境相が有力候補として取り上げられた。このうち石破新総裁は韓日関係に穏健な立場を取っていると評価されるが、日本の安保問題には比較的強硬な立場にもある。
自民党総裁選挙は、自民党所属議員と党員の投票を通じて行われ、1回目の投票で過半数の得票を得た候補者が出ない場合、上位2人の候補者が決選投票を行うことになる。今回の総裁選挙では、第1回投票でそれぞれ1、2位となった高市経済安保相と石破新総裁が決選投票を行ったが、2位だった石破新総裁が決選投票で逆転劇を繰り広げ、総裁に選出された。1回目の投票で72:46(高市:石破)だった議員投票数が決選投票で173:189と逆転したことから、1回目の投票で他の候補たちに票を投じた自民党議員たちが決選で高市の強硬な保守性向を憂慮し、穏健な石破新総裁に票を投じたものと解釈できる。
石破新総裁は全般的に穏健な立場を取っており、「歴史問題には前向き、安保問題には保守的」という評価を受けている。2019年、韓国政府が韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)を終了するとし、韓日葛藤が高まった時期、石破は自身のブログで過去の歴史問題と関連して「日本が敗戦後、戦争責任に正面から向き合っていなかったことが多くの問題の根源だ」と自身の考えを明らかにし、「何かを解決して過去の小渕首相-金大中大統領時代のような良い関係に戻ってほしいと考える人が少なくないだろう」と主張し、韓日関係で過去の問題に対して日本の前向きな態度が必要だとした。また、日本の政治家の靖国神社参拝を批判し、A級戦犯を靖国神社から分祀すべきだと主張するなど、前向きな歴史認識を持っている。

石破茂元自民党幹事長が9月27日、自民党総裁選挙で当選した後、手を挙げて挨拶している。/聯合ニュース
韓日関係に対するこのような立場から考えて、石破新総裁は韓日関係に比較的穏健な立場を取るものと見られる。特に、尹錫悦大統領と岸田文雄首相が12回の首脳会談を行うなど、岸田政権では韓日関係に対して融和的な立場を取っている状況で、このような基調を急激に変化させる理由は見当たらない。現在、自民党内の力学構図もこのような予想を裏付ける。総裁選で強力なライバルだった高市経済安保相が麻生太郎、安倍晋三元首相勢力の支持を受けたのに対し、石破新総裁は岸田首相勢力の支持を受けたと目された。岸田首相の3年間の在任中の最大の業績の一つとして韓日関係の改善を挙げているため、岸田首相勢力の支援を受けた立場でこれを傷つける行動を取る可能性は低い。石破新総裁は総裁投票当日の演説においても、「3年にわたり内政と外交で残した大きな功績に心から敬意を表する」と岸田首相に対して肯定的な評価をした。
しかし、石破は防衛庁長官、防衛相を務めた経歴があり、安保と防衛に対する立場が確固であり、また比較的保守的だ。憲法9条に根拠規定を追加して自衛隊保有を憲法に明文化しようという自民党の基本立場に賛成しており、個人的には自衛隊を国防軍と規定する憲法改正をしようという主張もした。米国の核兵器を共同運用する「核共有」に対するアイディアを出したりもしており、最近、米ハドソン研究所への寄稿では日米同盟を米英同盟水準にあげて平等にしなければならないと主張するなど、安保分野で日本の自主性を強調する立場を取っている。
北朝鮮との関係については、日本人拉致被害者問題の解決に向け、東京と平壌に連絡事務所を開設するという公約を打ち出した。北朝鮮との対話を実現させるという積極的な態度を見せているだけに、公約の実現可能性の問題はあっても、前向きな立場を示しているものと解釈される。
ただし、全般的に穏健な立場を持っていると評価されるが、石破新総裁も保守的な自民党の基本的立場と大きく異なる位置にあるわけではない。韓国大法院の強制動員損害賠償判決について、「国際法違反」と批判し、日本の独島領有権を主張するなど、韓日関係でも基本的には保守的な自民党の一般的立場と大きく変わらない側面もある。したがって、新任の石破首相が率いる日本政府において画期的な韓日関係改善を期待するよりも、現在の尹錫悦大統領-岸田首相の融和的関係が大きく変化せずに続きながらも、突出的に生じうる韓日の葛藤要素はいつでも潜在していると見るのが合理的だろう。
石破新総裁は10月に衆議院を解散し、総選挙を行う予定だ。石破新総裁の就任後初の試金石となる。総選挙において彼は自分を支持した党内勢力を考慮しなければならず、野党との対決でも勝利しなければならない。昨年の政治資金スキャンダルで長い間自民党を構成してきた派閥が大部分解体され、国民の自民党に対する信頼が落ちた状態で、党の危機を克服しなければならない重要な役割を担ったのだ。自民党より1週間先に代表選挙を行った野党第一党の立憲民主党の新代表に保守派の野田佳彦元首相が選出され、中道層支持を民主党に奪われないために自民党では強力な候補だった保守派の高市経済安保相ではなく、穏健派の石破総裁が選出されたという評価もある。このような国内政治の状況で、国民の心をつかむために自民党と石破総裁が穏健的な行動を見せるであろうという期待が集まっている。