
なぜ北東アジアの平和のために韓国と日本の核武装が必要なのか?

チョン・ソンジャン
世宗研究所韓半島戦略センター長
9月13日、北朝鮮官営メディアは金正恩の現地指導を報道し、核弾頭の原料である高濃縮ウラン(HEU)製造施設を電撃公開した。北朝鮮が2010年、米国の核物理学者であるヘッカー博士を寧辺に招待してウラン濃縮施設を見せたことはあるが、今回のように対外的にウラン濃縮施設の写真まで公開したのは初めてである。
金正恩は現地指導において、核兵器を「幾何級数的」に増やすために遠心分離機の台数をさらに増加させ、新型遠心分離機の導入も計画通り推進することを指示した。これは北朝鮮が今年の米大統領選挙の結果や国際環境の変化と関係なく、韓国や日本、米国までも攻撃できる十分な量の核兵器を保有するという金正恩の超強硬的な立場を示している。
北朝鮮が今回公開したウラン濃縮施設について韓国軍関係者は「規模から見て少なくとも4,000個以上の遠心分離機が設置されたものと推定される」と評価した。これは年間最低80キロのHEU(核弾頭3個分)を生産できる施設だ。軍関係者はまた「すでに知られている寧辺、降仙の核施設だけをフル稼働しても、北朝鮮は年間最大10個の核弾頭を確保できるものとみられる」とした。
米国のランド研究所と韓国が峨山政策研究院が2023年8月に作成した報告書である「韓国に対する核保障強化方案」では、「北朝鮮はすでに韓国に実存的脅威になりうる核戦力を備えており、米国にも深刻な脅威を加える直前だ。北朝鮮は自国の核兵器で米国を威嚇して韓米同盟を解体し、南侵をしなくても韓国を掌握することを望んでいる」とした。そして、北朝鮮が少なくとも180個の核兵器を保有していると推定し、2030年には最大300個の核兵器を保有できるとした。北朝鮮の最近のウラン濃縮施設の公開と金正恩の発言は、ランド研究所と峨山政策研究院のこのような分析が相当な妥当性があることを確認させるものである。

北朝鮮の核兵器は、韓国に対してだけ脅威となるわけではない。北朝鮮がもし戦争を起こせば、在日米軍が韓半島に移動し、日本の米国支援も避けられないだろう。その場合に北朝鮮が在日米軍基地や日本を戦術核兵器で攻撃する可能性を排除できるであろうか。もしその時点で日本が核兵器を保有していなければ、日本は北朝鮮によって容易に攻撃対象となるであろう。しかし、もし日本が核兵器を保有していれば、日本が米国を後方から積極的に支援するとしても、北朝鮮が日本を核兵器で攻撃することは難しいだろう。
近い将来、中国が台湾に侵攻する可能性も排除できない。2023年9月、中国で開催された国際学術会議に参加した筆者は、当時中国の共産党幹部と専門家の台湾統一意志があまりにも強力であることに衝撃を受けたことがある。習近平主席が台湾を統一すれば、毛沢東も成し遂げられなかった中国統一を成し遂げることになるため、習近平が長期執権のために武力統一まで辞さない可能性が高い。ジョン·アキリーノ米インド·太平洋司令官も2024年3月20日、米下院軍事委員会聴聞会に参加し、中国が2027年までに台湾を武力で統一できる力量を確保すると展望した。
もし今年の米国大統領選挙でドナルド·トランプが大統領職に再選されれば、彼は同盟より米国の国益を優先視する忠誠派を要職に任命し、米国の「世界警察」の役割を放棄する可能性が高い。トランプは、小さな島国(台湾)のため、米国が核武装した大国(中国)となぜ戦争をしなければならないのか理解できないため、習近平中国共産党総書記と台湾を放棄する取引をする可能性も開かれている。2024年1月、FOXニュースが「もしトランプが再び政権を担った状況で中国が台湾に対する武力挑発を敢行した場合、米国と中国の戦争につながる可能性を甘受してまで台湾を支援する考えはあるのか」と質問すると、トランプは明確に米国が台湾を助ける必要がないという意見を表明した。そしてトランプは「本来、米国は自主的に半導体を生産していたが、台湾が駆け上がった結果、全世界の半導体の90%を台湾が作り出している」とし「台湾が私たちの半導体産業を全て侵食してしまった」と主張した。 トランプは、米国が台湾を守る必要性を感じていないのだ。
2020年11月、トランプ米大統領は退任2ヵ月前にアフガニスタンとイラク駐留米軍の一部撤収を指示した。当時、アフガンに米軍4,500人、イラクに3,000人が駐留していたが、バイデン大統領が就任する2021年1月20日直前の1月15日までにそれぞれ2000人と500人を撤収させた。その結果、アフガン駐留米軍の44%、イラク駐留米軍の17%が非常に短い期間内に撤収した。民主党はもちろん、与党の共和党、同盟国の憂慮にもかかわらず、トランプ大統領は退任直前に主要外交·国防政策をこのように押し通した。
冷戦終結直後に作られた米国の二つの戦争同時遂行戦略は2012年に廃棄され、以後は一つの戦争だけを遂行しながら他の戦争は抑制するというワンプラス戦略が採択され現在まで維持されている。ところが2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻以後、グローバル次元で4つの戦線が形成されている。一つ目は欧州戦線、二つ目は中東戦線、三つ目は台湾海峡戦線、四つ目は韓半島戦線だ。米国がこの4つの戦線を同時に安定的に管理することはできないという点が問題だ。特に台湾海峡戦線で米中間の武力衝突が発生した場合、韓半島戦線で北朝鮮が核兵器を動員して武力挑発をするならば、米国の対応はさらに制限されるほかないだろう。
北朝鮮の対韓国核脅威がますます露骨化しており、韓国国民の独自の核保有支持世論は高まっている。峨山政策研究院が今年5月16日に発表した定例世論調査で、独自の核武装に対する韓国国民の賛成世論は70.9%だった。これはこのシンクタンクが2011年に初調査を実施して以来、最も高い数値だ。
このような状況においてトランプが大統領職に再選され、在韓米軍削減や韓米連合演習の縮小、防衛費分担金の大幅な増額などを推進した場合、韓国で独自核武装の世論は今よりさらに高まるであろう。そうすると尹錫悦政府も、世論の圧迫によって独自の核武装問題を真剣に考慮せざるを得なくなるだろう。もし韓国での2027年の大統領選挙や2032年の大統領選挙で、韓国独自の核保有オプションを支持する政治家が当選すれば、韓国は直ちに核武装の方向に進むのだ。したがって、韓国の独自核武装は時間の問題だ。早ければ10年以内に、遅くとも20年以内に韓国は核武装する可能性が非常に大きい。
現在、日本国民の大半は、米国がいかなる場合にも自国を守ると絶対的に信頼している。しかし、もしアメリカの大統領選挙で孤立主義および「米国優先主義」性向の政治家が大統領に当選し、アメリカが「世界警察」の役割を拒否するとしたら、日本はどうするのか。日本の周辺国の中で中国と北朝鮮が核兵器を幾何級数的に増やしている状況で、韓国まで北朝鮮の核の脅威に対抗するために独自の核武装の道を選択する時、日本だけが北東アジアで一人で「非核国家」として残っているのだろうか。
韓国と日本が国際社会の制裁を受けなかったり、またはほぼ形式的な制裁のみを受けながら核保有国になる方法は、両国が同時に核保有の方向に進むことだ。次善策は、韓国が先に独自の核保有を決定し、日本がその後を追うことだ。韓国と日本が同時に、または順次に核武装すれば、米国と西欧世界が彼らにも経済的に大きな被害を与える制裁を採択することはできないだろう。
韓国と日本が核武装すれば、北東アジアの安保状況は根本的に変わり、現在よりずっと安定した平和の時代が開かれるだろう。米国、中国、日本、ロシア、韓国、北朝鮮の6ヵ国が、核兵器で特定国家を互いに威嚇できない力の均衡状態が確立されるためだ。
不拡散論者たちは、韓国と日本が核武装すれば、北東アジアで米国の影響力が急速に衰退することを憂慮している。しかし、米国が北東アジアで北朝鮮と中国の核能力が急速に増強されることを阻止することもできず、韓国と日本の核武装だけを阻止することは、同盟国をさらに危険な状況に追い込んでいる。
韓国と日本の核武装は、北朝鮮と中国およびロシアという権威主義国家の北東アジアでの現状打破の意志を弱め、韓米同盟と日米同盟がさらに堅固な核同盟に進化する契機となるだろう。そして、米国は北東アジアで単独により北朝鮮と中国を牽制する時よりもはるかに強力な友軍を確保することになり、中国牽制にさらに力量を集中できるようになるだろう。