米中首脳会談の延期の中、アジア大会を通じた日朝関係改善の可能性

チョ・ウンイル(韓国国防研究院)
イラン戦争に伴う米中首脳会談の延期
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを空爆したことで始まったイラン戦争は、50日を超え、長期化の局面に入った。米国の地上軍介入という全面戦争の可能性も示唆される中、最近パキスタンの仲介により、米国とイランの間で2週間の休戦が宣言された。敵対行為の中止、ホルムズ海峡の再開などをめぐり交渉が緊迫して行われている状況下で、米中首脳会談のような既存の外交日程は大幅に遅れている。
当初3月に開催予定だった米中首脳会談は、トランプ大統領の延期要請により5月中旬に先送りされた。しかし、米側が実質的に首脳会談を準備するためには、会談前の4~6週間程度の時間が必要なため、6月以降の開催の可能性も完全に排除しにくくなった。米中首脳会談の開催がイラン戦争の終結と連動しているだけに、米中関係の不確実性も当然ながら高まっている状況だ。米国がイラン戦争に注力し、外交・軍事的な能力を中東に集中させている最中、対中懸案は優先順位から後退せざるを得ない。
こうした状況下で、北朝鮮の動きも尋常ではない。中国の王毅外交部長は4月9日に北朝鮮を訪問し、北朝鮮の崔善姫外相と会談を行った。2026年は「中朝友好協力及び相互援助条約」締結65周年にあたるため、記念行事の開催を含め、これを機に交流を強化することを提案したと伝えられている。時期的に見て、王毅部長の北朝鮮訪問は、米中首脳会談開催前に中朝間の立場調整を行うための事前会合という性格を持つと理解される。さらに、5月9日のロシアの戦勝記念日を機に、北朝鮮側高官の訪露の可能性も高い。もし金正恩・朝鮮労働党総書記が戦勝記念日の行事に出席すれば、戦略的に格上げされた北朝鮮・ロシア関係を改めて示す契機となるだろう。一方、中国はこうした状況を注視しつつ、北朝鮮との関係強化などを通じて対米交渉力を高めようとしている。
イラン戦争は、日本にも予期せぬ影響を及ぼしているが、それはまさに9月に開催予定の愛知・名古屋アジア大会に向けた準備である。ロシア・ウクライナ戦争以降、日本は原油輸入の90%以上を中東に依存している。ホルムズ海峡が事実上封鎖されれば、国際原油価格の上昇に伴う国内物価上昇の圧力が強まることになる。高市政権もホルムズ海峡を迂回する案などを模索しているが、当面は原油価格上昇による国内経済の不安定化を甘受せざるを得ない。現在は備蓄油を放出することで市場の供給不足を補っているが、上半期中にイラン戦争が終結したとしても、その余波は相当な期間続くだろう。また、戦争の余波により、イランを含む中東諸国のアジア大会への参加の可否や規模も不透明になったが、日本は開催国としてアジア大会の準備を急いでいる。

2026年愛知・名古屋アジア大会を契機とした、北朝鮮と日本の対話の可能性
こうした中、アジア大会が注目される理由は、北朝鮮の参加の可能性にある。2025年8月、当時の林官房長官は、アジア大会組織委員会に対し、北朝鮮が参加の意向を打診した事実を明らかにし、スポーツ庁でこれを検討していると述べた。2025年9月17日の共同通信の報道によると、北朝鮮はサッカーを含む17種目に選手150名、その他要員120名前後の規模の選手団を派遣する計画であることが分かった。これを受け、北朝鮮の立場を代弁する在日本朝鮮人体育連合会でもアジア大会準備協議会が発足し、日本国内の朝鮮総連系大学である朝鮮大学校もボランティアのための学生準備委員会を結成した。
そして2026年1月、北朝鮮がアジア大会のパラリンピックへの参加意向も打診したという報道が出た。北朝鮮は本大会とパラリンピックの両方への参加を打診し、スポーツ外交の窓口としてアジア大会を活用しようとする意図を示した。実際、2024年2月と3月、日本はスポーツ交流の一環として北朝鮮選手団の来日を許可したこともある。当時、岸田政権は北朝鮮との対話を求めていたが、北朝鮮は金与正氏の談話を通じて、日本側が北朝鮮に首脳会談を提案した点を異例にも明らかにした。2026年4月11日の共同通信によると、北朝鮮国家体育指導委員会委員長に朝鮮労働党書記の李基煥氏が就任した状況が確認され、李基煥委員長の就任を契機に、愛知・名古屋アジア大会への参加に関する協議が行われた可能性が指摘された。このように、北朝鮮によるアジア大会参加に向けた実利的な模索が始まった状況と見られる。
このような北朝鮮の前向きな姿勢は、日本にとっても日朝関係の変化の可能性を探る好機となり得る。日本の高市政権にとっても、アジア大会は日朝関係を打開する外交的機会となるからだ。高市首相は2026年2月に2期目の任期を開始するにあたり、安倍政権時代の対北朝鮮政策を全般的に継承する姿勢を示した。高市首相が厚い保守層の支持を基盤に安全保障保守を掲げているだけに、拉致問題の解決は相当な外交的意義を持つことになる。高市首相の第一期政権だった2025年10月、トランプ米大統領の訪日日程中に拉致被害者家族との面会が実現した。トランプ大統領は2017年に米国で、2019年に日本で、計2回にわたり拉致被害者の家族と面会するなど、直接会って慰め、解決を約束したこともある。このように、拉致被害者問題は米日朝関係において重要な政治的意味を持つ。
日本の高市政権も、拉致問題を解決するための手段として、アジア競技大会を機に日朝関係の変化の可能性を探っているものとみられる。2025年10月、米国のトランプ大統領は訪日日程の中で拉致被害者の家族と面会した。トランプ大統領は2019年の訪日日程中にも安倍晋三元首相と共に拉致被害者の家族と面会したことがあり、2017年には米国を訪問した拉致被害者の家族とホワイトハウスで面会した。拉致問題の解決は安倍政権時代から優先課題であったが、安倍前首相が金正恩総書記と直接対面する機会は模索できなかった。
そのため、高市首相も日朝首脳会談の開催などあらゆる選択肢を活用しようとしているが、現実的な制約は大きい。特に、拉致被害者家族の親世代が高齢化しており、拉致問題の象徴とも言える横田めぐみさんの父親も2020年に死去したことから、高市首相の時間的プレッシャーは小さくない。今や高市首相は、安定した政治基盤を担保として、日朝関係の突破口を開くための政策的な決断が必要だからだ。
こうした背景から、アジア大会の準備を名目に日朝高官級接触を試みることができる。9月のアジア大会開催直前に日本の政治家が訪朝したり、北朝鮮の高官が訪日したりするといったイベントを通じて、北朝鮮は対北朝鮮制裁の緩和といった実利的な要求を行うことができ、日本は拉致問題解決に対する政治的意志を示すことができる。特に、安全保障保守を掲げる高市首相にとって、拉致問題の解決は、中東戦争の余波による内閣支持率の低下を打開するための象徴的な成果として活用できるからである。
好機は訪れたが、情勢管理にとどまる可能性
したがって、今回のアジア大会は、日本にとってスポーツイベントを活用し、北朝鮮と直接対話できる機会となり得る。先の報道にあるように、北朝鮮の国家体育指導委員会委員長が新たに任命されており、こうした高官との面談を通じて対北朝鮮対話チャンネルを稼働させることで、ある程度情勢管理が可能となる。アジア大会の開会式や主要競技の観戦を名目に、内閣官房と北朝鮮の高官との間で親書の手渡しのほか、予備接触なども自然に行える。このため、日本が北朝鮮の選手団や応援団の入国を限定的に許可し、一時的に対北朝鮮制裁を緩和する柔軟性を発揮すれば、関係改善の合図として機能し得る。
このように日朝間の利害関係が噛み合って対話の口火は切れるかもしれないが、拉致問題と対北朝鮮制裁という壁を越えるには原動力が不足する可能性がある。日本の対北朝鮮政策は、2002年の小泉・金正日首脳会談で発表された平壌宣言に基づいているが、その大筋は、双方の拉致問題の解決、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決という二つの問題が解消されれば、日朝国交正常化を推進するという点にあるからだ。しかし、平壌宣言にもかかわらず北朝鮮の核実験が相次いだことで、現在、平壌宣言は形骸化している状況であり、日本は多国間の経済制裁に加え、人的交流、貿易、運航において広範な対北朝鮮独自制裁措置を講じている。
もちろん、拉致問題の解決に向けてこうした制裁措置の一時的な緩和が模索されたが、結果として依然として日朝関係は膠着したままである。したがって、スポーツ外交の象徴性を掲げ、日本が北朝鮮に対して積極的な対話の意思を示すことは可能であり、北朝鮮も対北朝鮮制裁を迂回する形で選手団の派遣など、実利を得ようとする可能性がある。
こうした状況的要素は、韓国政府の対北朝鮮政策にも活用される余地がある。現在、北朝鮮は対南関係の回復を拒否しているため、日朝関係の改善は、日韓関係をてこに北朝鮮へメッセージを提示できる機会となり得るからだ。韓国政府は、朝鮮半島の平和に対する日韓間の共通認識を形成しつつ、アジア大会の期間前後に実施される日朝高官級接触のレベルや、これを管理する日本政府のメッセージの変化を機敏に注視することが重要な局面である。