
北朝鮮のロシア派兵と国際政治

ホン・ヒョンイク世宗研究所主席研究委員
11月19日、ウクライナ戦争は1000日を迎えた。来年2月で満3年になる。プーチン大統領は、2014年に併合したクリミア半島と新たに占領したウクライナ領土の20%をロシア領土とし、ウクライナがNATO加盟を放棄すれば、終戦する可能性もあるとしている。ゼレンスキー大統領は領土を喪失しながらも、「終戦はできない」と耐えてきたが、米国と欧州の支援なしには、さらに多くの領土を喪失する可能性が高い。
今年8月、ゼレンスキーは「勝利計画」に基づき、電撃的にロシア領土クルスク州を攻撃し、例えて言うなれば、ソウル市面積の1.5倍まで占領した。ウクライナ東南部で攻撃中のロシア軍を分散させると同時に、占領したロシア領土と奪われたウクライナ東南部領土を交換しようという計算だった。しかし、ロシアは期待通りとはならなかった。ロシアの主力軍は引き続き攻勢を強化し、クルスクでは徴集兵と予備軍を中心に構成された兵力で奪われた土地の半分程度を回復し、陣地戦を繰り広げ、小康状態を維持していった。
北朝鮮の派兵名分
プーチン大統領はすでに、その2ヵ月前の6月に平壌を訪問し、旧ソ連が北朝鮮と結んだ同盟条約を復元した。特に条約の第4条は「一当事国が第三国から武力攻撃を受けた場合、国連憲章第51条と国内法に基づき軍事力を含むすべての手段を動員して支援する」と規定した。皮肉にもゼレンスキーは先に侵略されたが、ロシア領土の一部を攻撃してロシアも「侵略された」状況を作り、ロ朝同盟条約上の集団自衛権が発動できる条件を充足させた。

ロシアの北朝鮮軍派兵に対する公式発表はなかったが、1万人余りとされる北朝鮮軍はロシア軍の服装で活動しているという。10月中旬、ウクライナが北朝鮮のロシア派兵を主張し、韓国国家情報院も10月18日、北朝鮮軍特殊部隊1万2千人がロシアに派兵され、極東で訓練を受けていることを確認した。米国、欧州、NATOは確認をためらった。米国とNATOがウクライナに武器や資金は支援しているが、兵力は派遣していない。これが確認されれば派兵を取り巻く圧迫も大きくなり、この場合、国内政治的に負担になるうえ、戦争拡大の危険性まであるということを考慮したためと推定される。しかし、今は米国務長官も北朝鮮のクルスク派兵を確認し「韓、米、日、NATOは国連安保理決議案に違反した北朝鮮の派兵を糾弾し、安保理常任理事国であるロシアが国際規範を無視する無責任な不法行為を犯した」と糾弾している。
ロシアと北朝鮮の戦略的計算
戦争中であるロシアは、数十万人の兵士が殺傷され、長期的な消耗戦の様相から兵力補充が急がれるが、給与の他に一時金として2千700万ウォン(約19,300万$)を払っても新兵募集が難しい状況であり、経済も国際制裁に加え若者の労働力不足によって賃金が急上昇し、インフレが深刻な状況だ。このような状況で、北朝鮮が兵士を派遣することになり、日照りの状況から恵みの雨に見舞われた心情であろう。もちろんウクライナ戦争に動員されたロシア兵士が60万人であり、現地の地形に疎く意思疎通ができない1万人余りの北朝鮮兵力が戦勢を決定的に覆すことはできないだろう。しかし、少なくともロシアがクルスク地域で現状維持を越え、少しずつ実地を回復するには相当な役割を果たすことができるだろう。北朝鮮軍の一部が、北朝鮮が支援した砲弾やミサイルを扱うなら、より大きな役割も果たすことができるだろう。
特に、米大統領選挙で戦争を早期終息させるというトランプ氏が当選し、来年1月20日に就任すれば、その後はいつでも戦争が終わる可能性があり、その瞬間に自国の軍隊が占領しているところが領土となる可能性が高いので、プーチンとしては実地のクルスク回復に一人の兵士でも多く送らなければならない状況だ。北朝鮮との関係強化を通じて、90年代半ばから中国に譲歩した韓半島に対する影響力とともに、関与権を増進することもでき、北朝鮮の港を海軍基地として活用する可能性もある。
北朝鮮の金正恩は、派兵によって多様な戦略的利益を得ることができる。これまで単なる友好国として過ごしてきた国連安保理常任理事国であり、核大国であるロシアとの関係を、同盟を越えて血盟に格上げし、国家安保に相当な協力を与える代価として多くのものを得ることができる。まず、北朝鮮はロシアから核保有国として認められており、ロシアは国連安保理で対北朝鮮制裁を阻止している。金正恩は、北朝鮮貿易の90%を依存している中国に従属することを恐れているが、ロシアとの緊密な関係で、中国に毅然とした関係を維持することができる。また、実戦経験のない北朝鮮兵士たちに現代戦を経験させ、特に韓半島での戦争で使用すると公言し、ロシアに支援したとされる「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれる火星-11型(KN-23)短距離弾道ミサイルを戦場で試験する機会を持てば、これは韓国の安保に大きな脅威を与えるだろう。
北朝鮮の兵器体制もロシアの最近の兵器に変えることができる。韓国に劣る対空兵器や海軍および空軍の協力を通じて、兵器体制も現代化していく機会を得るができるだろう。また、人工衛星と関連して推進体および衛星体技術とロシアの汎地球位置決定システムのグロナス活用、そして弾道ミサイルの大気圏再進入技術、多弾頭誘導化、3000トン級以上の大型潜水艦の建造技術まで受ける可能性が高い。また、ロ朝合同演習の実施とともに、韓半島の有事の際にロシアが介入して支援する可能性も確保することになるだろう。
外交的には、ロシアの戦略的後援と仲介により、トランプ政権と核軍縮交渉を開始する環境を整える可能性も高い。経済的には兵士の給与が北朝鮮から受け取る平均給与の20倍を超える金額であるため、彼らを派遣して北朝鮮当局が得る収益は1年に1兆ウォン(7億1400万ドル)程度で、これは北朝鮮輸出額の3分の1以上に当たると推定される。その他にも、ロシアに不足している労働力の派遣や、ロシアが豊富に保有している石油や食糧支援なども期待できるだろう。
韓国政府の対応方案
北朝鮮の派兵によりロ朝関係が血盟に進展し、ロシアが北朝鮮に経済的利益だけでなく外交および軍事·安保支援を提供することが予想されるため、韓国政府は強く抗議した。もし、北朝鮮軍がウクライナ戦争に介入することが確認されれば、これまでウクライナに提供していた防毒マスク、医薬品、地雷除去装備など非殺傷用人道主義支援を越え、防御用兵器、すなわちウクライナが望む戦闘機や弾道ミサイルを迎撃する「天弓-1」や「天弓-2」を提供することができ、最後の段階では攻撃用殺傷兵器として155ミリ砲弾やK9自走砲を送ることもできるということまで出ているが、これに対しては国益に基づく得失を考え、冷静かつ慎重に決定されなければならない。
特に、防御用兵器でもロシアが北朝鮮に、韓国を脅かす兵器や軍事技術を提供したことが確実に明らかになった場合に提供するのが賢明であろう。また、韓国・ロシア間の戦略的パートナー関係を活用して外交的に説得し、交渉を通じて解決することが韓半島の平和と統一に進む基盤を固める国家戦略に符合するものと考えられる。