
ロ朝密着による北朝鮮の経済的効果と
対北朝鮮制裁の相関関係分析ならびに展望

チェ・ジャンホ対外経済政策研究院
2024年6月19日、ロシアのプーチン大統領が平壌を訪問し、ロ朝首脳会談が開催された。両首脳は2023年9月、ロシアのボストチヌイ宇宙基地で首脳会談を行ったことがある。今回の首脳会談は、プーチン大統領が24年ぶりに平壌を直接訪問したという点と、両国が包括的戦略パートナー協定を締結したという点で、両国いずれにも象徴的な出来事であった。ロ朝関係は既存の善隣友好関係から事実上、同盟水準に格上げされた。包括的戦略パートナー関係は、軍事分野を含む様々な分野(包括的)において、長期的かつ大きな枠組みの協力(戦略的)を相互同等の位置(パートナー)で友好的な協力を追求するという意味である。したがって、両国の協力分野が拡大し、何よりロシアが北朝鮮をパートナーとして認識するという宣言という点で、外交的に意義がある。
2024年10月、韓国の国家情報院は北朝鮮がロシアに派兵したことを公式に確認した。 北朝鮮がロシアに派兵した理由については、さまざまな解釈が出ている。最も共感できる解釈としては、①外貨稼ぎ、②軍事経験の習得、③ロシア科学技術の導入などが挙げられる。 しかし、北朝鮮軍をロシアに派兵した時に得られる収益が1年に2.4億ドル水準であり大きくないが、この程度の規模の外貨は軍隊派兵よりは仮想通貨ハッキングでも十分に稼げるためだという評価も存在する。 筆者はロシア・ウクライナ戦争が終わると同時にロ朝関係が弱体化する可能性もあると思ったが、今回の派兵でロ朝関係がロシア・ウクライナ戦争以後においても持続するという解釈に同意する。
北朝鮮には、中国一辺倒の対外関係から脱し、ロシアとの関係改善を図る必要があり、今回のロシア派兵は、ロシア・ウクライナ戦争後もロ朝関係が持続することを保障する安全弁になった。

理由を問わず、最近のロ朝関係の核心は、2回にわたって相次いで開催された首脳会談と、そこで締結した包括的戦略パートナー関係、そして派兵となっている。これを補助するため、経済協力としてロシア人の北朝鮮観光、ロ朝貿易の拡大、労働者派遣(シベリア伐木工、都市日雇い労働者)などが推進されており、社会文化協力によりロ朝高位級の人事交流、体育文化交流なども推進されている。しかし、今日において中心となっている軍事·安保協力と比較すると、経済協力と社会文化協力はほとんど推進されていないと見られる。
北朝鮮とロシアは現在、対北朝鮮制裁とウクライナ戦争が長期化していることから、協力が避けられない状況に置かれている。北朝鮮は、すでに約8年間続いてきた国連の強力な対北朝鮮制裁の状況を免れるために、対北朝鮮制裁の緩和または免除に近い積極的な対外経済協力が必要な状況だ。そのうえ、体制の安定と主権を最も重視する北朝鮮は、ロシアが行っている戦争と外交政策を支持する名分が十分なものだと判断したのだろう。最近になって覇権主義に対抗する多極体制の形成とこのような新しい国際秩序への積極的な参加は、北朝鮮がこれまでの情勢を打破できる新しい経済·外交的販路になるだけでなく、自国の戦略的価値を上昇させる機会としたのだろう。ロシアの積極的な態度は、北朝鮮に活発な対外経済協力事業の再開あるいは推進の機会を提供することもできるということがあり、北朝鮮においてはロシアとの関係改善、ロ朝関係の格上げに対する需要が大きい。
ロシアも戦争の長期化で軍需品の調達が必要な状況であり、北朝鮮に対する影響力を拡大することはロシアの地政学的価値を上昇させる要因になる。極東地域での物流網拡張、多極体制構築に対する北朝鮮の支持確保、北朝鮮に対する影響力拡大などもロシアがロ朝関係改善を導く原動力だ。 ロシアはウクライナ戦争が終わるまで北朝鮮との関係を安定的に管理しなければならないため、北朝鮮の経済協力推進要求をある程度受け入れるしかなく、北朝鮮の立場ではウクライナ戦争終了とともにロ朝協力の火種が急速に消える可能性があるため、ロ朝間の軍事協力とともに経済協力も並行する必要がある状況といえる。
ロ朝協力の強化は、中朝関係の微妙な悪化という予期せぬ効果につながっている。中朝関係の悪化は、公式的な部分よりも非公式的な部分で行われている。 中国は、北朝鮮との非公式貿易(密輸)を取り締まっており、北朝鮮が要求している中国内の北朝鮮労働者の滞在ビザの延長を拒否している。北朝鮮は、中国との関係悪化を不快に思っている。北朝鮮の全体貿易で中国が占めている割合は95%を上回る。2019年、中国人の北朝鮮観光客は30万人に迫るほどだった。中国に派遣されている北朝鮮労働者の数も正確な数字を確認することは難しいが、様々な言論の報道を集めてみれば5万人~10万人水準と知られている。ロ朝関係の改善が予期せぬ中朝関係の微妙な悪化につながっているが、これは北朝鮮にとって経済的に得よりは失の方が多い結果をもたらしている。
ロシアと北朝鮮は、経済協力を推進できるインフラが十分に整っておらず、経済協力の規模も小さかった。2023年の中朝貿易は約28億ドルだったのに対し、同年のロ朝貿易は3440万ドル水準だった。2024年2~9月に北朝鮮を訪問したロシア人観光客は600人に過ぎなかった。ロシアに居住する北朝鮮労働者(軍人を除く)数もやはり正確な規模が分からないが、2,000~3,000人水準だと言われている。
数字上だけを見れば、ロ朝密着が北朝鮮に与えた経済的な効果はそれほど大きくない。ロ朝協力の核心は軍事安保にあり、経済協力はこれを補助する役割だけをしている様相だ。北朝鮮とロシアは経済協力を大幅に拡大することで数回合意しているが、ロシア政府や企業はロ朝の経済協力にいかなる投資もしていない。また、ロ朝経済協力は意思決定と事業推進が分離された二重構造をしているが、経済協力事業の決定はモスクワと平壌がするのに対し、実際の事業推進は沿海州(ウラジオストク)と羅先市が行っている。地方政府である沿海州と羅先市の財政構造が良くないため、経済協力事業が円滑に推進できずにいるのだ。ロ朝経済協力で最も拡大が有力な分野は、北朝鮮労働者のロシア派遣だが、いまだに変化が見られない。ロ朝密着は、すぐさま北朝鮮に大きな経済的利益をもたらしてはいない。将来においてロ朝経済協力が拡大する可能性が高いが、実際にそうなるかはもう少し見守らなければならない。過去にあった協力の歴史を振り返ってみれば、労働者の協力を除いては拡大の可能性はそれほど大きくない。
ただ、北朝鮮のロシアへの武器輸出は、北朝鮮の製鉄産業の活性化につながっている。北朝鮮のコークス輸入は2018~2019年の年平均28,887トンだったが、ロ朝協力が活性化された2023年は34,078トン、2024年1~9月は29,661トンで国連の対北朝鮮制裁強化時期より多くの量を輸入している。しかし、北朝鮮の製鉄産業活性化が北朝鮮経済全般には広がっていないと見られる。北朝鮮当局は依然として建設分野(地方発展20×10政策、農村の住宅建設)にだけ集中しており、化学産業と軽工業(食飲料、学用品)は依然として困難に直面しているようだ。
対北朝鮮制裁と関連しては、ロ朝協力強化は、国連の対北朝鮮制裁を相当部分無力化させることができるものとみえる。ロシアが北朝鮮に提供すると予想される領域は多く、そして多様であるが、最先端の宇宙関連技術とミサイル、戦闘機、潜水艦関連技術などが挙げられる。人工衛星発射体の安定化技術と軍事偵察衛星と関連した技術の移転は、国連の対北朝鮮制裁でICBMミサイル発射技術の開発に反する可能性がある。潜水艦技術もSLBMと関連して国連制裁に違反する可能性がある。
ただ、経済的には、まだロ朝密着が、国連の対北朝鮮制裁の根幹を揺るがすほどではないようである。北朝鮮の対ロシア通常兵器輸出による輸入も、年平均2.5億ドル水準と推定される。 上述のようにロ朝貿易や、ロ朝観光も拡大していない。2024年に限ってみると、ロ朝密着による逆効果として中朝関係が微妙に悪化し、北朝鮮が被った損害がさらに大きいと言える。
それにもかかわらず、ロ朝密着に対する憂慮が大きいのは、今回の北朝鮮のロシア派兵でロ朝関係が一段階、進化できる契機がつくられ、それが将来の経済関係改善につながる可能性が大きいためだ。北朝鮮とロシアは、経済協力を拡大できる必要性と名分が溢れている状況だが、現実環境が容易ではなく、まだ具体化されていない。しかし、今回の派兵を契機にロシア政府と企業が実質的な投資を始めれば、ロ朝経済協力は短期間において拡大することができ、それは国連の対北朝鮮制裁が弱まることにつながるであろう。現在、ロ朝の経済関係は微弱な水準だが、今後の成長可能性は大きいという状況にあると評価できる。
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