
2025年以降: クアッド3.0のシナリオを考える

ホ・ウォンヨン
国立木浦大学アジア文化研究所学術研究教授
9月22日、米国·日本·インド·オーストラリアの安全保障協議体であるクアッド(Quad)首脳会議が米国で開催された。4ヵ国の首脳が5回目に集まったこの席では、それぞれ選挙不出馬を宣言したバイデン米大統領と岸田文雄首相が出席した最後の会議だった。これはすなわち、日本の総選挙と米国の大統領選挙を経て、クアッドが新しい方向に展開することを意味するという点で、まさに今が4ヵ国の安保協議体の成果と課題を整理し、韓国に与える含意が何かを考察するに適切な時期といえる。
より長期的な観点からクアッドを見るためには、従来の分析と時間的な区分を異にする必要がある。多くの分析では、日本の安倍晋三元首相が「自由と繁栄の海」を唱えて「クアッド安保対話」を提案した2007年をクアッド1.0、その後の長い空白期間を経て、米ドナルド·トランプ政権が本格的に安保協議体を復活させた2017年をクアッド2.0の始まりと見る。しかし、これら協議体の登場と停滞および展開は、その前後の長い脈絡の中に位置している。
クアッド1.0は、中国の脅威がまだ体感的に現実化されていない域内状況の中で、日本の早熟な地政学的想像力を核心動力として推進された。4カ国協議体の始まりは、2004年にインド洋津波復旧および援助のために結成した「津波コアグループ」だった。2008年2月、オーストラリアのケビン·ラッド首相の就任とオーストラリアのクアッド参加中断、そして2009年8月の日本の民主党への政権交代は、この時期に比較的対立的でなかった東アジア域内の地政学的脈絡を示している。2004年から2013年までの約10年に近い期間は、中国の浮上に対する期待と警戒が同時に作動した時期だった。安倍首相自身が小泉純一郎首相の靖国神社参拝で冷え込んだ日中関係を改善し「戦略的互恵関係」の格上げに合意したことがこれをよく示している。
クアッド2.0もトランプ政権によって突然登場したわけではない。クアッドの復活は中国の台頭を肌で感じるようになった日本が提示した「インド-太平洋」という地政学的概念と深い関連を持っている。2012年12月に2度目の首相に就任した安倍晋三は就任直後、クアッド国家を中心とする「アジアの民主主義セキュリティーダイヤモンド」概念を提示し、2016年にはこれを地域概念として具体化した「自由で開放されたインド-太平洋(FOIP)」構想を用意して、米国を積極的に説得した。このような変化には、2010年9月における尖閣近海での中国漁船衝突事件と2012年尖諸島国有化措置によって劇的に高まった対中国脅威論が鮮明に反映されている。

クアッド(Quad)4カ国の首脳が米ワシントンのホワイトハウスで2021年9月24日(現地時間)に会談を開いている。/ワシントン|EPA聯合ニュース
クアッド1.0が初期試行錯誤の時期だったとすれば、2013年から2024年までの約10年間において形成·持続されたクアッド2.0は対中国牽制のためのミニラテラリズム協議体が制度化される時期だったと言える。中国との戦略競争が本格化した中、日本の地政学的構想を受け入れたトランプ政権の強力な推進で復活したクアッドは、2019年と2020年にそれぞれ1回ずつ外交長官会談を行った。ここには中国の国内政治介入疑惑とCOVID-19事態で中国脅威論が高まったオーストラリア、そして2020年6月、国境衝突後に中国との関係が大きく悪化したインドの状況が影響を及ぼした。バイデン政権が発足した2021年には、2月の第3回外相会談に続き、3月には4ヵ国の首脳がオンラインによる初の首脳会議が開かれた。その後、2021年9月から2024年9月まで4回の対面による首脳会議が開催され、クアッドはミニラテラリズムの安保協議体としての位置を強固にすることになった。
このような過程において米国は「クアッドプラス」への拡大を図り、韓国をはじめとする周辺国の参加を直接·間接的に誘導してきた。こうした動きはトランプならびにバイデン政権ともに見られたが、文在寅政府では中国を考慮して原論的な立場を打ち出す消極的な姿勢を示した。一方、クアッド加入を公約に掲げた尹錫悦政府の発足後は、米国の要求がより具体的な形に変化している。2023年2月、米上院外交委員会がクアッドプラスへの韓国の参加を提案したのが代表的な例だ。
では、2025年以降におけるクアッド3.0の時代はどのように変化するのであろうか。4つの要因が今後のクアッドの性格を左右すると考えられる。第一は、欧州と中東で起きている戦争および大規模紛争の行方だ。超長期化したロシア·ウクライナ戦争と、どこに広がるか予測し難いイスラエル·パレスチナ紛争による中東情勢の激化は、クアッドをより軍事同盟の方向に導く可能性がある。第二は、中国の習近平政権の外交と両岸関係の変化だ。2027年に3期目を終える習近平主席はデフレーションの危機の中で親米·独立性向の頼清徳台湾総統を対象に両岸関係で劇的な成果を出さなければならないという圧力を受けている。
第三は、日本の石破茂新首相の動きだ。安全保障において強硬な立場を見せる石破首相は、既存の安保体制の連結と拡大(JANZUSなど)を通じた「アジア版NATO」の推進を公言しており、韓国に友好的な姿勢と相まって韓国を含むクアッド拡大を推進する可能性がある。最後に第四の要因としては、11月に予定されている米国の大統領選挙の結果だ。ハリス副大統領が当選する場合には現在のような路線が予想されるが、トランプが当選する場合には米中関係の変化と共にクアッドの拡張や韓国に対する役割分担要求が強化される可能性が十分に予想される。
上記した四つの要因の結合によって大きく2つのシナリオが考えられる。第一は、クアッド2.0の維持(statusquo)というシナリオである。域内の地政学的緊張が現在と類似した水準に維持され、(トランプ当選後でも)大きな突発事態が発生しなければ、クアッドは現在のミニラテラリズム的協議体の性格を強化するだろう。この場合、韓国は域内のミニラテラリズムの活性化が持つ意味を考慮して行動する必要がある。米国は様々な小規模協議体のネットワークを通じた統合抑止戦略を追求しており、これにはクアッドだけでなく日米豪三ヵ国戦略対話(TSD)、AUKUS、韓米日安保協力、民主国家連合体(D-10)、チップ4(韓米日台)など多様な体制が想定される。韓国も公式機構ではなく、クアッドに対する参加の可否で論争するよりは、既存に参加した協議体を中心に協力対象と範囲を調整し、必要に応じて拡大する戦略を取る必要がある。
第二に、軍事的拡張のシナリオだ。域内の地政学的環境が悪化し、衝突の可能性が高まれば、米国はクアッドの軍事同盟の性格を強化し、周辺国も積極的に引き入れる可能性がある。こうした拡張は単にクアッドだけでなく、現在進展している北大西洋条約機構(NATO)とインド太平洋4カ国(IP4、韓·日·豪·ニュージーランド)との協力が急速に加速する形になる公算が大きい。 このようなシナリオが現実化する場合、韓国がクアッドに参加しなければ、域内および域外国家から不信を招く可能性が高い。したがって、このようなシナリオが現実化する場合には、より早い政治的決断が必要であり、防衛産業および海洋能力構築など韓国が役割分担を要求される分野で先制的に協力する姿勢が求められるだろう。
このようにクアッドは域内の地政学的環境の変化が作り出した産物であり、固定された制度ではない。今後のクアッドもまた、周辺の有事事態を含めた地政学的地形変化が最も大きな前提として作動するだろう。中堅国の韓国は、北朝鮮とロシアの同盟と韓米日安保協力の復元など、韓半島情勢と国際情勢の連結度が高まるなかで、これに対して素早い対応をとる必要がある。今後の域内の地政学的環境の変化を先制的に把握しながら、周辺国とどのように戦略的に協力するかを決める知恵がいつになく大きく求められている。